ノイマン・チルドレン

 ノイマンが最後に開いた乱交パーティーに女性を派遣したのも、ヴィクターであった。それはノイマンコロラド州某所にあったアメリカ軍の秘密病院施設に収容される二週間ほど前のことだ。ノイマンは依然として腑抜けのままであったが、その状態をみるに見かねたノイマンの悪友たちが自宅の寝室にこもりっきりであった彼を無理やりに連れ出し、パーティーを開かせた。ノイマンは最初乗り気でなかったものの、これが最後のパーティーになるかもしれない、という予感があったのかもしれない、彼は普段は使わないと決めていたコカインを吸引し、カーペットを年代モノのシャルル・エドシックでびしょしびしょにしながら、ペッペーマン・レディース・サーヴィスから派遣されてきた高級娼婦たちと事に及んだ。薬物による覚醒作用により疲れを忘れた悪魔の頭脳は、この日11人のさまざまな女性と交わった。そして、このとき射精されたノイマンの体液に含まれていた生殖細胞は、それぞれみな、相手方の卵子に到達し、受精する。驚くべき命中率。それはまるで一撃必殺のスナイパーのごときっだったが、この結果がコカインによる作用だったのか、それとも浴びすぎた放射線が彼の生殖細胞に授けた力によるものだったのかは分からない。しかしながら、ノイマン精子の中心小体から伸びた軸糸が通常の3倍の速さで振動していたことは、入院中に興味本位で彼の精液を顕微鏡で覗き込んだ医師によって記録されており、そこに何らかの要因が隠されていたのだろう。しかしながら、このとき誕生した受精卵が、皆ノイマンの忘れ形見として世に誕生したわけではない。妊娠の確率を決めるのは、精子の強さばかりではないのだ。受精卵のうちあるものは、着床できずにそのまま退化し、あるものは薬物の力によって強制的に排卵された。あるものは無事着床して成長していたものの堕胎手術によって誕生を阻害される。結果として、赤ん坊として母親の子宮から誕生することができたのは3つの受精卵だった。ノイマンが死んだ日の朝、ヴィクター・ペッペーマンはオフィスで自分の大口顧客が死んだことを知る。そして、次の瞬間、立て続けに鳴った3度の電話で彼は、自分が管理していた“女性スタッフ”が妊娠しており、仕事を続けることができなくなったことを伝えられる。女たちは皆口々に「どうも、ノイマンの子どもみたいなのよ」と話した。ヴィクターは、まるで冗談のようなこの報告の真偽に若干の不安を感じたものの、仮に冗談だったとしても面白い冗談だ、と思ったので、ご祝儀を兼ねた退職金を彼女たちの口座に振り込んでやることにした。